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「莉子、出番だ」
(言われた! ほーしする! リコ犬ほーしする! いぬいぬいぬ〜ほーしー)

「わう♪ わう♪」

俺は莉子を連れて、椅子に座った会員たちのところへと向かう。

莉子をぐるりと円形に囲む椅子のひとつに近づくと、俺は莉子にちいさく耳打ちする。

「………わかったな?」

「わう♪」
(せんせーわかったよ!リコ言われたとおりにほーしするね!)

「おなかをすかせたあわれなメスイヌにどうかエサをおあたえくださいませ」

「わう?」
(リコ言えたかな? ちゃんと言えたかな?)

「これは、よく躾けられた犬ですね。ちゃんとおねだりできるとは」

「わううぅぅ♪」
(よくわからないけどリコほめられたリコうれしい!せんせーもきっとほめてくれるね!)

「ねーせんせーこれでいい?リコよくできました?」

「ああ、お前はいい犬だ」

「わん♪」

「よしよし」

「わん♪ わん♪」

頭をなでられて、莉子が嬉しそうに目を細める。

葵などとも仲良くしているようだし、クラスでも可愛がられているようだから、こうしたケースには慣れているのだろう。


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